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◆ トランプ勝利の背景を考える [    ◇ トランプ大統領]


METALLICA (feat. NEIL YOUNG)
~ Mr. Soul (MetOnTour 2016)

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田村秀男の日曜経済講座
トランプ勝利の背景を考える
行き詰まった米国型株主資本主義

2016.11.13
(http://www.sankei.com/premium/news/161113/prm1611130022-n1.html )

米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。

共和、民主両党の主流派が推進してきたグローバリズムへの「ノー」に米国民の多くが唱和した。

底流には米国型資本主義モデルの行き詰まりがある。

日本は表面的な「トランプショック」に惑わされず、米国モデル追随路線を見直す機会にすべきだ。


トランプ氏は職を奪う自由貿易協定の破棄や移民排斥を訴えた。

米国の格差拡大、白人中間層の困窮化から来る不満をすくい上げた。

かと言って、モノ、カネ、ヒトの国境をなくしていくグローバリズムを逆流させる動因はそうした国民感情ばかりではない。

多数とは言えないにしても、これまでグローバル化を担ってきた主流派の中にもトランプ氏を推す勢力が存在する。

でなければトランプ氏は全米的な支持を得られるはずはなかったはずだ


米国型資本主義には今や、トランプ氏のような異端者、劇薬の固まりのような人物の手を借りなければ、打破できないほどの閉塞(へいそく)感が漂っている。





グラフは世界の対米投資動向と株主資本利益率の推移を示す。

米国型資本主義モデルとは、世界最大の債務国米国が日本をはじめとする外部からの資本をニューヨーク・ウォール街に引き寄せることで成り立つ。

そのための枠組みはグローバルな金融自由化ばかりではない。

株主利益を最優先する企業統治という仕掛けとグローバリゼーションは一体化している。


金融市場の投資尺度は企業財務のうち、株主の持ち分とされる「純資産」、すなわち株主資本に対する利益率である。

利益率を高める経営者にはストックオプションなど高額の報酬が約束される半面で、一般の従業員は絶えずリストラの対象にされ、給与は低く抑えられる。

そんな金融主導モデルが全産業を覆ってきた。


このビジネス・モデルはグローバリズムを推進した 1990年代の民主党ビル・クリントン政権と 2001年発足の共和党ジョージ・W・ブッシュ政権のもとで大成功を収めた。

1994年には国内総生産 (GDP) の 4% 余りだった外国資本流入は 2007年には 16% 近くまで上昇する間、ウォール街は沸き立った。

世界の余剰資金は住宅市場に流れ込んで住宅相場をつり上げた。

住宅の担保価値上昇を受けて、低所得者にも住宅ローンが提供された。

多くの家計は値上がり益をあてに借り入れ、消費に励み、景気を押し上げた。

日本、中国など世界各国は対米輸出で潤った。


住宅の値下がりとともに、この借金バブルが崩壊したのが 2008年 9月のリーマンショックである。

以降、米国への資本流入は不安定になり、縮小する傾向が続く。

並行する形で、株主資本利益率が変調をきたした。

上昇しかけても息切れし、低落する傾向にある。

海外資金吸収は細り、その GDP 比は 4% を切った。

そして実体経済のほうは賃金の低迷、貧困層の拡大、中間層の消滅危機という具合だ。

米国流株主資本主義の衰退と言うべきか。


米国のエスタブリッシュメント(支配層)の観点からしても、金融主導のグローバリズムを墨守することには躊躇(ちゅうちょ)せざるをえなかっただろう。

トランプ氏はヒラリー・クリントン氏がウォール街とつるんでいると非難したが、実はそれほどの緊密さはなかったはずだ。


来るトランプ政権は反グローバリズムを試みるしかないが、グローバリズムの代案が否定形済まされるはずはない。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)以外の選択肢は一方的な報復に走る 2国間交渉主義しかないが、世界の自由貿易秩序を破壊し、米国にとってはもろ刃の剣だ。

安直なのはドル安路線だが、外国資本依存の米金融市場をますます弱体化させるだろう。

最大の対米債権国として、日本はトランプ氏に毅然(きぜん)としてモノ申すべきだ。


もっと気になるのは、米国型株主資本主義モデルをお手本とする日本の経済界の追随路線だ。

グラフが示すように、日本産業界の株主資本利益率はたしかに米国をしのぐのだが、実体経済への恩恵にならないどころか、むしろ成長の妨げになっている。


賃金の上昇を抑えて、株主資本の一部である利益剰余金を膨らませても、国内はデフレ圧力が高まる。

デフレの下では円高になりがちなので、たとえ TPP を推進しても国内産業が自由化利益を得るとはかぎらない。

米国型モデルの不発ぶりは本家ばかりでないことをこの際認識し、日本型を追求すべきではないか。

  

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