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◆ 第1章 (3) 無限増殖する偶像なき身体 [  ❒ 新しい神の国(古田博司著)]


TENZIN KUNSEL ~ First when I left my home | དང་པོ་ནང་ནས་ཡོང་དུས། (2019)



古田博司著新しい神の国

第1章 多神教的世界観の勧め


3. 無限増殖する偶像なき身体


日本の神々の身体は『古事記』による限りでは、自然発生・単性生殖・両性生殖という三つの方法で無限増殖する。


例えば アメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビ などは天空に自然発生した。

イザナギ と イザナミ は両性生殖である。

そこから
・オホコトオジヲ(国生みの大事を讃える大いなる男神)
次に
・イハツチビコ(石と土の御子の神)
・イハズビメ(石と砂の姫神)
・オホトビワケ(大いなる直しの御子の神)
・アメノフキヲ(天の息吹の神)
・オホヤビコ(大いなる禍の神)
・カザゲツワケノオシヲ(風の息吹の御子の大いなる男神)
などが次々と生まれてくる。

善神も悪神もごちゃまぜで、ただただ無限に増えていくのである。


単性生殖はといえば、イザナギが黄泉(よみ)の国から戻って禊(みそ)ぎ払いをしただけで、
・投げ捨てた杖から ツキタツフナド が
・解いた帯から ミチノナガチハ が
・ほうった袴から トキオカシ が
・うちやった衣からは ワヅラヒノウシ が
・褌(ふんどし)からは チマタ が
・冠からは アキグヒノウシ が
次々と生まれ、きりがない。


そしてこれらの神々には偶像すらないのだ。

第一、どんな神さまなのかさえよく分からない。

つまり、彼らは無限増殖する、偶像なき多神なのである。


インドの象の姿をしたガネーシャ、腰に髑髏(どくろ)を帯びて舞い狂うシヴァ。

武将姿と言えば、ギリシアのアテナ、中国の二郎真君や、朝鮮の崔宝将軍。

猿の姿のタイのハヌマーンや、中国の斉天大聖孫悟空は言うに及ばず、娼家の守り神で豚の姿の猪八戒(ちょはつかい)まで、多神教の神々には皆然るべき姿がちゃんとある。


しかるにわが国の無限に増える神々には、何一つ卑俗な姿というものがない。


絵画にしてみても、髷(まげ)を結い、左右の結髪(けつぱつ)に勾玉(まがたま)をぶら下げて、だぶだぶの白衣で腕に玉飾りを付け、弓弦を引き絞っていたりするのだが、どの神もみんな同じで、そのような姿くらいしか描けない。

サルタヒコ の神は猿の姿で描かれたりするが、本居宣長がこれは シリテルヒコ がつまった形で、尻が赤く光る神だと言っている。

その実、何がなんだかこれもよく分からない。 


はっきりした姿のある神など、日本には一柱もいないのだ。

そしてどこからでも湧き出てくる。

ある神が右目を洗えば出てくるし、左目を洗っても鼻を洗っても出てくる。

息子の神の首をはねても、その血が岩に吹きかかると、そこから新しい神が出てくる。

下痢をしても、反吐を吐いてもそこから出てくる。

死んでも、その屍体から新しい神が生え出てくる。

これはなかなか尋常な宗教とは思われない。 


しかし、そのようなわが国の神々の特徴に、なぜ普段気づくことが希(まれ)なのだろうか。

多すぎて実体が分からないため、神社でも、わかりやすくて偉い神々だけを祭るという傾向がある。


・アマテラス(天照)や
・スサノヲ(須佐之男)や
・ハヤアキヅビメ(速開津比咩)
などはよいけれど、例えば海浜から沖にかけて、どうでもよい神(失礼・・・)がごちゃごちゃいて、
・オキザカル の神(沖へ遠離(とおざか)るところの神)
・オキツナギサビコ の神(沖から渚へ波の打ち寄せるところの御子の神)
・オキツカヒベ の神(沖と渚の間の神)
・ヘザカル の神(海岸から遠離るところの神)
・ヘツナギサビコ の神(海岸から渚へ波の打ち寄せるところの神)
・ヘツカイベラ の神(海岸と渚の間の神)
などとなったら、聞いている方が混乱していらいらしてくる。


で、こういう神々はみな等閑に付されたのではないか。

かわりに世の神社では、『古事記』に出てこないような民間の苔神や、大岩や狐や猫みたいのまで括って祭ってしまう。

比較的人格のはっきりしている神と、動物や自然物であとは補うので、「無限増殖する偶像なき多神」 という日本の神々の本質が見えなくなるのであろう。


あとはそれから、海外の一神教(キリスト教、イスラム教)や有限の多神たちの宗教(仏教、道教など)が周りから影響を与えるので、そちらの方につい目が行って、自分の足元が見えなくなるということもあるだろうかと思われる。

こういうのを全部取り払って虚心で自己を見つめれば、日本の神々がとてつもない性格をもっていることが初めて分かるというものである。


そんなことをあれこれ、部屋の壁をひやひやと踏まえながら考えていると、南国の一日はあっという間に暮れゆくのであった。




新しい神の国 ☆ もくじ
(https://hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-1 )

第1章 多神教的世界観の勧め

1.ホッブズ・ワールドのロック・ソサエティー
  (hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-2 )
2.極限の身体
  (hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-3 )
3.無限増殖する偶像なき身体
  (―)
4.悲しみの島ハワイ
  (hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-5 )
5.偏在する神々の魂
  (hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-6 )
6.日本の神々の二つの系譜
  (hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-7 )



文明の衝突
日本は東アジアの一員じゃない


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