◆ 第5章 (2) 2ちゃんねらーのティーゼイションと左翼の堕落 [ ❒ 新しい神の国(古田博司著)]
KILLSWITCH ENGAGE ~ The New Awakening (2013)
古田博司著『新しい神の国』
第5章 神々の復権
2. 2ちゃんねらーのティーゼイションと左翼の堕落
そうしてみると、最近の2ちゃんねらー系のティーゼイションも、この庶民文化の延長上にあるものではないかと思われるのである。
しかし左翼の側からの批判といえば、彼らの「ナショナリズム」を西洋思想の言説から云々するばかりなのであり、それでは彼らの「ナショナリズム」を左翼的な枠で日本に植えつけてやるようなものではないかと、逆に危惧するのである。
北田暁大などは彼らの言動を、
なのだという。
だが、そんなに泰西的なものだろうか。
北田の擁護する左翼メディアや文化人を江戸の道学先生やシナの宋儒におきかえれば、
などと茶化しているのと、今の2ちゃんねらーたちはあまり変わらないように私には見える。
それよりも、進歩的文化人や良心的知識人などの左翼が、あまりに嘘をつきすぎたため、世論の右傾化をうながしているという掛谷英紀の見方のほうが、北田の晦渋な論稿(教養のペーストが足りないと、往々理念的な文章は晦渋になりがちなものである)よりはよほどリアルである。
掛谷は、
と指摘し、
・進歩的文化人が共産主義や文化大革命を礼賛したウソ、
・良心的知識人が北朝鮮を「地上の楽園」といったウソ、
・北に拉致はない、核開発はしていないといったウソ
などを列挙している。
そして、
と述べているのは、けだし一面の理がある。
左翼の側にも反省の声が上がっていて、辛光洙事件の一件以外、北朝鮮に問題にすべき拉致はないと「実証」してしまった東大名誉教授・和田春樹(「『日本人拉致疑惑』を検証する」上・下『世界』岩波書店、2001年1月号・2月号)に対して、
と語る太田昌国の発言は重い。
太田は和田春樹に、
と、かつて賛辞を惜しまなかった過去があるだけに、なおさら無念だったのではないだろうか。
それに対し、一方和田春樹は、
と、嗤っているのである。
いったい何がこうも、日本の左翼を堕落させたのだろうか。
それは彼らが
・多人数という数の力に依拠し、
・マイノリティの右の意見を徹底無視することにより、
・学界・官界・マスコミでの権益を最大限に伸長させ、
・人脈や名誉、はては論壇を独占し、
・人の諫めを聞かないという習性を身につけてしまった
からにほかならないだろう。
だが彼らも今では、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」とでも言わざるを得ない情況になつつあるのは確かなようである。
第5章 神々の復権
2. 2ちゃんねらーのティーゼイションと左翼の堕落
そうしてみると、最近の2ちゃんねらー系のティーゼイションも、この庶民文化の延長上にあるものではないかと思われるのである。
しかし左翼の側からの批判といえば、彼らの「ナショナリズム」を西洋思想の言説から云々するばかりなのであり、それでは彼らの「ナショナリズム」を左翼的な枠で日本に植えつけてやるようなものではないかと、逆に危惧するのである。
北田暁大などは彼らの言動を、
アイロニズムの消尽の果てに生ずる、ロマン的意匠を施された、確信犯的ナショナリズム以上の「厄介な(そして危険な)政治的投企」
(「嗤う日本のナショナリズム」『世界』2003年11月号)
(「嗤う日本のナショナリズム」『世界』2003年11月号)
なのだという。
だが、そんなに泰西的なものだろうか。
北田の擁護する左翼メディアや文化人を江戸の道学先生やシナの宋儒におきかえれば、
理学とか宋学とやらの親仁達が無極にして大極なりと男根をおやせども、是もつてむづかしい事でもなんでも無い。
ちかく人間に取て言て見れバ、無極大極とハとりも直さずまらの事なり。
(『志道軒五癖論』安永年間、僧深井志道軒の名を借りた戯作)
ちかく人間に取て言て見れバ、無極大極とハとりも直さずまらの事なり。
(『志道軒五癖論』安永年間、僧深井志道軒の名を借りた戯作)
などと茶化しているのと、今の2ちゃんねらーたちはあまり変わらないように私には見える。
それよりも、進歩的文化人や良心的知識人などの左翼が、あまりに嘘をつきすぎたため、世論の右傾化をうながしているという掛谷英紀の見方のほうが、北田の晦渋な論稿(教養のペーストが足りないと、往々理念的な文章は晦渋になりがちなものである)よりはよほどリアルである。
掛谷は、
「私が分析するに、右傾化が進んでいる理由は、ずばり、『左翼のウソ』である。
この数年、いままで左翼がついてきたウソが次々に明らかになってしまったこと、そしてそのウソに対して左翼が全く謝罪していないこと、これこそが世論が左翼に背を向ける最大の原因なのではないだろうか」
この数年、いままで左翼がついてきたウソが次々に明らかになってしまったこと、そしてそのウソに対して左翼が全く謝罪していないこと、これこそが世論が左翼に背を向ける最大の原因なのではないだろうか」
と指摘し、
・進歩的文化人が共産主義や文化大革命を礼賛したウソ、
・良心的知識人が北朝鮮を「地上の楽園」といったウソ、
・北に拉致はない、核開発はしていないといったウソ
などを列挙している。
そして、
「情報化が進んだ現在、中国のような言論統制国家にでもならない限り、メディアを握ったからといって、ウソを隠し通すことはできなくなっているのである。
逆にウソを重ねれば重ねるほど、その反動が世論のさらなる右傾化を促す構図になっている」
(『学者のウソ』ソフトバンク新書、2007年)
逆にウソを重ねれば重ねるほど、その反動が世論のさらなる右傾化を促す構図になっている」
(『学者のウソ』ソフトバンク新書、2007年)
と述べているのは、けだし一面の理がある。
左翼の側にも反省の声が上がっていて、辛光洙事件の一件以外、北朝鮮に問題にすべき拉致はないと「実証」してしまった東大名誉教授・和田春樹(「『日本人拉致疑惑』を検証する」上・下『世界』岩波書店、2001年1月号・2月号)に対して、
「なお自分の検証が間違っていたということを認めれば、こんなに(ママ)状況になることはなかったと思っています。
/ でも、和田さんはそれをしなかった。
(中略)
続けて現代社会主義にそんな無残なできごとはつきものだ、スターリン時代のソ連はどうであったかというふうに論点を変えてしまうわけですね」
(太田昌国・金富子・鵜飼哲「『北朝鮮』言説を解読する」『インパクション ― 「北朝鮮」異論』インパクト出版会、2003年)
/ でも、和田さんはそれをしなかった。
(中略)
続けて現代社会主義にそんな無残なできごとはつきものだ、スターリン時代のソ連はどうであったかというふうに論点を変えてしまうわけですね」
(太田昌国・金富子・鵜飼哲「『北朝鮮』言説を解読する」『インパクション ― 「北朝鮮」異論』インパクト出版会、2003年)
と語る太田昌国の発言は重い。
太田は和田春樹に、
「それにしてもいろいろな現場をもちながら戦後の革新運動の中で大きな役割を果たしてきた人です」
(東アジア反日武装戦線への死刑・重刑攻撃とたたかう支援連絡会議編『あの狼煙はいま』 インパクト出版会、1996年)
(東アジア反日武装戦線への死刑・重刑攻撃とたたかう支援連絡会議編『あの狼煙はいま』 インパクト出版会、1996年)
と、かつて賛辞を惜しまなかった過去があるだけに、なおさら無念だったのではないだろうか。
それに対し、一方和田春樹は、
「日本は左翼を強めるという希望は見えません・・・。
『情況』の誌面でそういうことを言っちゃいけないですね(笑)」
(和田春樹・佐藤優 〔司会・白井聡〕「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題をどう見るか」―その歴史と現在『情況』情況出版、2007年1・2月号)
『情況』の誌面でそういうことを言っちゃいけないですね(笑)」
(和田春樹・佐藤優 〔司会・白井聡〕「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題をどう見るか」―その歴史と現在『情況』情況出版、2007年1・2月号)
と、嗤っているのである。
いったい何がこうも、日本の左翼を堕落させたのだろうか。
それは彼らが
・多人数という数の力に依拠し、
・マイノリティの右の意見を徹底無視することにより、
・学界・官界・マスコミでの権益を最大限に伸長させ、
・人脈や名誉、はては論壇を独占し、
・人の諫めを聞かないという習性を身につけてしまった
からにほかならないだろう。
だが彼らも今では、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」とでも言わざるを得ない情況になつつあるのは確かなようである。
新しい神の国 ☆ もくじ
(hawkmoon269.blog.ss-blog.jp/2019-11-11-1 )
第5章 神々の復権
1. 日本の茶化し文化
2.2ちゃんねらーのティーゼイションと左翼の堕落
3.ティーゼイションが社会的対象を喪った近代
4.自己をテイーゼイトする私小説
5.何を言っているのか分からない人たち
6.大本営的虚構の背景
◆ 日本は「東アジア」の一員じゃない
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